ごきげんのツボ

ほぼごきげん、時にはふきげんな日もあるブログ

97歳、巣作りを始める   No.300 

 

義母がこの4月から施設に入って2ヶ月。わたしたちの肩の荷が下りたのも束の間だった。短い面会に訪れるたびに何かが違うと感じていた。きれい好きで整理整頓が趣味の義母の部屋がほとんど片付けられていなかったからだ。持ってきた荷物がほとんどそのまま放置してある。大好きな家と離れて生きる気力を失っているようにも見えた。義姉が送ってくれた歌ったり喋ったりする《こうたくん》というぬいぐるみロボットを脇に置いて「かわいいよ~、この子が居たらぜんぜん寂しくないよ」とそのぬいぐるみだけが唯一の友だちかと言わんばかりに話しかけていた。

 

「この施設はほんとのいいよ~」と繰り返す義母の本音でないことを薄々感じていたが、わたしたちはその感情に蓋をしていた。前向きな義母は自分がみじめにならないように言い聞かせている気がしてならなかった。50数年、自宅で音楽教室を営んでいた義母は人の言う通りに動くことが苦手で、いつも家事と仕事が忙しく、友だちと雑談をして過ごす時間はあまりなかった。施設のみんなで語らうお茶の時間やゲームの時間にあまりなじめていない様子で心配だった。

 

はじめて会った老人たちと部屋は別々とはいえ、同じ屋根の下で暮らすのは違和感しかないのだろう。かと言ってみんなが広間にいるのに部屋に閉じこもっているのも余計に孤独を感じるのかもしれない。

『お義母さん、元気そうでよかったです。またすぐ来ますね。』ありきたりの言葉をかけて帰りながらも「本当はこれではいけなかった、自宅の方がいいに決まっている。」という思いが何回もよぎりながら施設を後にした。

それでも車で2時間離れている自分たちの家に戻るとその感情も薄れていく。他人事にしてしまっている自分に心の底から嫌気がさすこともあった。

 

それから1ヶ月経ち、月イチの病院の診察に付き添った時、前回とは打って変わって義母の表情がとても明るかったのに驚いた。話もしっかりしている。その後、介護認定の審査があった。ケアマネ曰く「昨年よりかなりいい状態に戻っています。要支援のレベルがひとつ下がるかもしれません。今は巣作りに夢中ですよ」と言われた。そうなのだ、驚いたことに部屋が美しく片付いていたのだ。お義母さんに16年連れ添った猫の写真が飾られ、小さく仕切られた引き出しに生活雑貨がきちんとしまわれていた。

まさに巣作りが始まっていた。ここでの喜びを見つけたのか、3ヶ月経って、人間関係も築かれつつあるらしい。

スタッフの人に聞くと時々ドリルのようなアクティビティにも参加して、わからない人に教えてたりしているそうだ。6畳足らずの部屋、窓から見える青々とした畑とわずかな家財道具。小さな空間とここいる仲間で自分の世界を作ろうと無意識のうちに決心したかのように見えた。その明るく笑う表情が今までとは違う、本物だったことに今度は本当に肩が軽くなった。

 

97歳まだまだ進化を続けている。

 

おしゃべりロボット《こうたくん》はタンスの中に片付けられていた。もう寂しくはなくなったということなのかと思って聞いてみると「あれはかわいいくて誰かが取って行くかも知れないからタンスに締まって時々おしゃべりしてるの。」と言っていた。

『へっ?』

物を取られるかもしれないというのは認知の初期症状。

そこだけは少しおかしいけど、お義母さんが笑ってるからまぁいいか。

《今日の義母のひとこと》

「今度来るとき、一番ちいさなミシンを持ってきてちょうだい」

 

『了解しました!』   

 

 ヤル気にあふれている義母さんの方がいい。

 

空家仕事も多い

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番犬1号  (陶器よ!)

 

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草取りしたよ

 

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隣も空き家

 

(6月17日のブログの書き直しです)

 


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