この4月から施設に入った義母。少し肩の荷が下りたのも束の間だった。訪れるたびに何かが違うと感じていた。きれい好きで整理整頓が趣味の義母の居室がほとんど片付けられていなかったからだ。大好きな家と離れて生きる気力を失っているようにも見えた。義姉が送ってくれた歌ったり喋ったりする《こうたくん》というぬいぐるみを脇に置いて「かわいいよー」とその子だけだ唯一の友だちかと言わんばかりに話しかけていた。
「この施設はいいよ~」と繰り返す義母の本音でないことを薄々感じていたが、わたし達はその感情に蓋をしていた。ありきたりの言葉をかけて帰りながらも「ほんとうはこれではいけなかった」という思いが何回もよぎっていた。
それでも自分たちの生活に戻るとその感情も薄れていく。他人事にしてしまってる自分に嫌気がさすこともあった。薄情…
先週、月イチの病院の診察に付き添った時、義母の表情がとても明るかったのに驚いた。話もしっかりしている。若いものには負けてはいない。その後、介護認定の審査があった。ケアマネ曰く「昨年よりかなりいい状態に戻っています。要支援のレベルがひとつ下がるかもしれません。そして今は巣作りに夢中です」と言われた。そうなのだ、今回の訪問で一番驚いたことは部屋が義母らしく工夫されて片付いていたのだ。ここでの喜びを見つけたのか、2ヶ月経って、人間関係も築かれつつあるのかもしれない。そんな気がした。
その明るい表情が今までとは違う、本物だったことにホッとした。
97歳まだまだ進化を続けている。《こうたくん》はタンスの中に片付けられていた。もう寂しくはなくなったということだったら嬉しい。
《今日の義母のひとこと》
「今度来るとき、一番ちいさなミシンを持ってきてちょうだい」
ミシンをかけたくなった義母のやる気に拍手を送りたくなった。ただこれにはケアマネからストップがかかった。針が危ないとのことだったが義母の洋裁の腕はプロ並み。初心者がさわるわけじゃないのに・・
「編み物なら安全だからいいですよ」・・・うーん、複雑。