ごきげんのツボ

ほぼごきげん、時にはふきげんな日もあるブログ

久住山リベンジ No.187

『二度と登山はしない!』

30年前に誘われるままジャージにスニーカーという軽装で登った久住山は初登山にもかかわらず強い雨に見舞われた。ずぶ濡れ、ドロドロの哀れな姿となり、最初から最後まで不機嫌な一日となった。『アウトドアの何が面白いのかまったく意味不明』と毒づきながらもギリギリ笑顔の写真はなぜか、今でも持っている。久々に見てみた土砂降りの中で仲間たちと写った写真は一気に20代に引き戻してくれた。あの時、山には登らないと宣言したはずだった。

 

あれから30年、また久住登山の機会が巡ってきた。コロナによりアウトドア推しの世の中、当時の心の痛手も薄まっていて、その自信はどこからくるのか、軽く登れそうな気がしていた。今では体力も衰え、体重もまちがいなく増えているけど、颯爽と山道を登るイケてる自分を勘違い妄想していたのかもしれない。そして初日は快晴、美しい坊がつるや雨ヶ池など、どこを切り取っても景色が澄んでいて、『これこそ登山じゃん!』と30年前に同じ道を通ったとは思えないほどの張り切りぶりだった。その夜は温泉に入ったり、法華院温泉山荘から星を眺めたりして登山のオプションも楽しめた。

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浮かれ気分もここまで。リベンジとなる2日目はまさかの雨だった。

 

『いやいや、みなさん、かなり降ってますよ…』

 

自宅で荷物を詰めながら晴れると勝手に思い込み、雨具を家に置いて行こうとしていた。『山に雨具持って行かんとかありえんやろ』と言ったオットにこの時ばかりは心から感謝した。雨足はそこそこ強い。ゆるゆるメンバーだったら、リタイア宣言をしてしまいそうだったが、今回のメンバーは強者揃い、やめる選択は一切なく、当たり前のように一行は出発した。ゆっくりした歩調だったが、それでも一歩、一歩がきつすぎた。何回見上げても頂上ははるか遠い、というか見えない。一瞬だけ足が上がらず、リタイアしたい時があったが、よく考えてみると戻る選択肢はない。とにかく雨に濡れた岩を踏みしめながら、登るしかなかった。この日は登ってる人はほとんどいなかった。久住山は九州では人気の山で、みんな挨拶をしながら和気あいあいと登って行くのではないのか?予想に反し風と雨の音が響く静かな登山となった。

 

『わーん、きついよー』、心の声。

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そしてなんとか頂上に立った時の達成感は一瞬で、登ってきた道を降りれるのかという不安の方が大きかった。降りないという選択もない登山。当たり前のことなのにまたここで気合いを入れなければならなかった。

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そんな初心者ながらの小さな葛藤を繰り返しながらも「くるしい」と「うれしい」という声が調和していた気がする。体力は限界に近かったが人のいない静かな登山道は、ガスがかかり余計に神聖に見えた。岩ばかりの道かと思ったら、パーッと平原し開けたり、体のネガティブと心のポジティブが交互にやってくるような不思議な気持ちを味わいながら登り、降りた。今思えばが意識が半分ぼんやりしていた気がする。

30年前のナンチャッテ登山では感じなかった感覚だ。同じ雨なのに何が違うのか、あの時は登山靴も履かず軽装過ぎたということもあるが、それを差し引いても山自体は変化しているはずもなく、雨も同じように降り続いていた。ただ変わったのはわたしの気持ちだけだということかもしれない。

 

そもそもなぜこの年になって登山の誘いにいの一番に手をあげたんだろう。昔から体力だけには自信があった。小学校からずっと運動だけは絶やしたことはなく、体を動かし汗をかく時こそ生きてるって気がしていて、この元気は永遠に続くと思っていた。それが数年前、思わぬ病気を患い、当時やっていたジム通いやダンスなどすべてやめてしまったのだ。いや、実際には普通に動けたのだが、俗にいう大病のため、入院、手術と、気持ちの上でもすっかり病人になってしまい、悠長にジムに通ってる場合ではなくなったのだ。それから散歩やヨガは続けていたけど、熱量的にいつも物足りなさを感じていた。とにかく全身を使って動きたい、汗をかきたい欲求がどこかでくすぶっていたんだろう。 

たくさん生きてきた証が欲しかったのかもしれない。運動をやめていた間、どんどん太り始め、心にまで贅肉がついていたことはたしかだ。 

人並みの人生経験を積み、今回の登山ではあの不機嫌なわがまま娘はなりを潜め、全身を使いまくった満足感に浸っていた。今から何年生きるかわからない。体に優しい運動もいいし、精神を安定させるマインドフルネスとかいうのもいいだろう。でもやっぱり自分の好きなことをするのが一番!と気づかされた今回の久住山だった。 

おかげで登山は楽しいものだと記憶がすっかり塗り替えられた。『趣味は登山です』と堂々と言えるくらい色んな山に挑戦してみたい。『よしよし』以前の前のめりなわたしが戻ってきた感じだ。 

とは言え、なぜか職場の階段を登るのも息切れしているのが現状だ。ここ数年のブランクは大きい。この年から体力は上げていけるのか?膝に不安はないのか?30年前とは違う課題がふりかかってきた。

 

 

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