ごきげんのツボ

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母たちのプライド(姑編 その2)No.81

サナエさんはいつになく高い声でキャッ、キャッとはしゃいで嬉しそうだった。

『わたしね、表彰されている夢を見たのよ、ほんと、一生懸命生きてきたから』と自画自賛

いつも方言を使わない義母の話はドラマの中の台詞のように聞こえる。総理大臣からもらったって言ってたかな。(私は総理からはいらんけど)

 

一緒に居た元気のいいケアマネのOさんが『わたしが表彰状作ってきてあげますよ! 井上さんはかんばってきましたよ、ほんとに。』と調子を合わせてくれる。嫁の私は無邪気にそんなことはなかなか言えない。

 

義母、サナエさんはこの夏の終わりは体力が落ちて生きる自信を少し無くしていた。

心配していたけど、最近は『運動しましょ』という名のなんともアクティブ活動重視のデイサービスに週一で通いだして、少しハイテンションの面持ちに見える。

ジムのような場所だと勘違いしていて、『年寄りばかり!人間関係が難しい』といって最初は憮然としていたようだが、元気で話せる同世代(90代⁈)がいるとわかって段々適応していったようだ。90代でも人間関係気にするのか。

 

週一しか通えないけど、それでもスケジュールがある生活は張り合いがあるのかもしれない。

 

普段サナエさんの頭の中は自宅を回すことでいっぱい。頭は極めてしっかりしている。

『れーこさん、れーこさん』と電話越しに指令が飛ぶ。これまたズボラでテキトーな嫁なので『はい、はい、わかりましたよー

やりますねー(いつか)伝えますねー(いつか)』と言いながら、緊急じゃない場合は放置。どうしてそんなに家にこだわるのかイライラすることもあったがそれが義母のプライドなのだ。

大人数の家族の面倒を見ながら、離れで音楽教室を50年営み、旅行は行く暇などなく、近所の人を集めてパン作ったり、洋裁したりしていたと言っていた。

時代が違うと言えばそれまでだが、彼女のプライドはこの家そのものなのだ。

もうその一緒にすごした近所の仲間も亡くなったり、施設に入ったりで同じ年頃の人は誰も居ない。

 

30年の嫁生活で把握したこと、そんな彼女の思いを理解して話を聞いてさえいればそれで大満足なのだ。(表彰状はあげる勇気がない。)

とにかくわたしのミッションは話を聞くことと帰った時の草取り。(家は見事に掃除されている、リスペクト!)

 

以前とちがって笑って話が聞ける分、嫁としてまぁまぁな位置をキープしてるはず。(前向きな解釈)昔はいちいち心の中で口ごたえしてたなぁ。


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それでもなかなか重い課題は山積みのまま。

 

続く。

 

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